ロシア語一"語"一会102回

ロシア語由来の外来語2

ノルマ

このロシア語由来の単語ノルマ(норма)には多くの国語辞典では「労働の基準量」という解釈が与えられている。本家のロシアでもустановленная мера(所定の量)あるいはсредняя величина(平均値)との説明がなされているので、それほど意味がずれているわけではない。しかし、現実においてノルマは「上から指示される半強制的な仕事量」と理解されることが多く、ネガティーブな意味合いで使われることが多い。

本来ノルマという単語は色々な分野において「規則」や「基準」という意味で使用されるのであるが、生産や工事といった仕事の現場では「年齢や熟練度また知的水準等を基に算定された標準的な仕事量」と理解され、かつそのような意味で使われてきた。従って、ノルマとは「恣意的な強制」を排除した合理的な仕事量とされてきたのである。

それでは、日本でなぜネガティーブな使われ方をされるのかであるが。これは主に第二次大戦後の日本人捕虜のシベリア抑留と関連している。異国の地にあって、食料も不十分でありかつ過酷な自然環境の中で、ロシア人管理官のいう「ノルマ」という言葉は、まさに過酷な労働を強要する命令として聞こえたであろう。当時の日本人捕虜が切実な思いで記憶したロシア語の単語はこのノルマとダモイ(домой「家へ」つまり「帰国」という意味)であったと考えられるが、多くの人が帰国後の回顧録の中で「ノルマ、ノルマと言われながら重労働で亡くなった人が多い」と語っていることからも判断できる。

ロシア語のノルマ(норма)はドイツ語あるいはフランス語を介してロシア(そしてソ連)で使われるようになったラテン語のnormaが元になっている。「直角定規」という意味であるが、「規則」や「模範」といった意味でも使われ、それから派生した形容詞がnormalisで、英語では名詞はnormそして形容詞はnormalという形で用いられている。またnormal(ロシア語はнормальный)は半ば日本語化している「ノーマル」つまり「標準的な」「正常な」という意味であり。ロシア語も英語も本来の使い方をすればまったく同じ意味である。

ところが、正常ではない体験で得た単語のノルマ(норма)にはアブノーマルabnormalな意味合いが込められるようになり、時には反対の意味をも含むような使われ方がされているのである。

小話(анекдот)

Британские учёные успешно разработали и испытали на мышах средство от старости: ни одна мышь до старости не дожила. Средством очень заинтересовались работники Пенсионного Фонда России.
(イギリスの学者がネズミを実験台に老化防止の薬を見事に研究・開発しました。ところが、一匹のネズミも老齢に至るまでに生き残ることはありませんでした。その薬に大変興味を示したのがロシア年金基金の職員でした、とさ。)

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