ロシア語一"語"一会

第101回 ロシア語由来の外来語1

アジト

このアジトという単語は、近年のニュース記事ではほとんど使われることがなかったが、今年(2017年)5月に中核派の活動家が逮捕されたときの報道で久々に使用された。

広辞苑によるとアジトとは「労働争議やストライキなどを密かに指導する煽動司令部。俗に地下活動家の隠れ家。」との説明があり、他の辞典もおしなべてこのような解説をしている。つまり、今回の場合は「地下活動家の隠れ家」という意味で用いられている。 ロシア語ではагитационный пункт(略してагитпункт)というが、агитацияという言葉をロシア人自体がどう使ってきたかをみてみる。1948年から1965年という長い期間をかけて編纂された17巻の「現代標準ロシア語辞典」の解説ではагитацияのことをУстная или печатная деятельность партии и класса, имеющая целью воздействовать на идеологию широких народных масс в определенном направлении.(定められた方向に向かって、広く国民大衆のイデオロギーに働きかけるための党及び階級の口頭もしくは出版での活動)となっている。このагитпунктはソ連時代の1919年に創設されたもので、上記の説明のように、計画経済の遂行や独ソ戦(第二次世界大戦)では国民の意識を鼓舞する面で大きな役割を果たし、戦後は特に選挙キャンペーンで利用されることが多かった。

つまり、ソ連(ソ連共産党)にとっては積極的に利用するものであり、日本の辞典に書いてあるような「反政府的な」色合いを持つものではなかったと言える。 アジトをロシア語由来の単語とするなら、このような歴史的な背景も加味されてしかるべきだと思うが、「敵対国」の言葉だから、あるいは「革命」と結び付いた言葉だから、あえて否定的な意味を込めかつ強調したのではと推測される。

また、агитпунктを「アギト」とカナ表示していないことも気になるところである。これは多分、英語訳のagitation pointが基になっているのであろう。 агитацияという言葉自体、本来ロシア語にはなかったものである。ドイツ語(agitation)からの借用であり、このドイツ語の元になっているのはラテン語のagitatioで、動詞のagito(「動かす」、「駆り立てる」、「実行する」等の意味)から派生している。 歴史的社会変化の中で「駆り立てる」が「煽動する」という意味を持つようになり、それが時の支配者によってプラスに作用するのか、あるいはマイナスに働くかで、この言葉の利用のされ方も変化している。 共謀罪(改正組織的犯罪処罰法)が成立(2017年6月15日)した今日、このアジトというロシア語由来の言葉は今後頻繁に使われる可能性がある。それは多分「密談の場」と解釈されるのではないかと思われる。

小話(анекдот)

Российская сборная по футболу - это единственная сборная, которой можно официально разрешить принимать допинг, поскольку это может служить практическим доказательством того, что допинг никак не влияет на высокие результаты в спорте.

(訳:ロシアの選抜サッカーチームは、公式にドーピングが許可される唯一の選抜チームである。なぜなら、このドーピングがスポーツで好成績をあげるにいかなる影響も与えていないということを実質証明しているからである。)

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