日本ロシア語情報図書館

第2回

書名:  国民の保護
  Сбережение народа
著者: N.M.リマシェフスカヤ Н.М. Римашевская
出版社: モスクワ、ナウカ社  М. "Наука"
出版年: 2007
ページ数: 326 с.
国民の保護 表紙

紹介者:実藤正義

日本ロシア語情報図書館 館長

本の題名は「国民の保護」とでも訳したらいいのでしょうか。ロシア語で「保護」という意味を持つ単語はзащитаとかохранаといったものがありますが、本にこのような題名を付けたについては、何かいわくがあるように思えます。というのも、сбережениеの元になっている単語はберечьで、この動詞は「大事にする」、「保管する」、「節約する」が主要な意味だからです。

ともあれ、出版社がНаукаで、この出版社はソ連時代からまじめな(別の言葉で言えば「硬い」)出版物を多く世に出してきたことで有名であり、内容については信頼されてもいます。編者はロシア科学アカデミー準会員のН.М.Римашевскаяで、ロシア人文・社会科学基金の後援で出版されました。

このように書くと、硬くてロシア政府よりの内容ではないかと思われるかもしれませんが、本の内容はほとんどアンケートで集められたデーター(モスクワ市)と統計資料を基にしており、ロシアの現状をかなり的確に捉えているようです。例えば、次のような表現があります:「住居の個人所有化政策は、住民が法的な手続きに無知な状況で行われたため、正常な市場が形成されることなく、その収奪ビジネスをはやらせただけである」。

引用されているデーターを幾つか紹介します。

1)ロシア人の平均寿命の推移

 

女性

男性

1990年

74,0

64,0

1995年

72,0

58,0

2000年

72,0

59,0

2004年

72,0

59,0

2)モスクワ市民へのアンケート「今は子供をつくるような時ではないという意見に賛成ですか」(%)

 

まったく賛成・どちらかと言えば賛成

どちらとも言えない

まったく反対・どちらかと言えば反対

18−29歳

22,3

23,4

54,3

30−39歳

14,6

17,1

68,3

40−59歳

27,5

7,5

65,0

60歳以上

5,3

26,3

68,4

3)消費される食品の国際比較(単位はキログラム)

 

ロシア
(2002年)

ドイツ
(2000年)

米国
(2000年)

フィンランド
(1999年)

野菜と瓜類

91

93

124

63

果物および他の果実

40

156

100

85

肉およびその加工食品

46

86

116

68

牛乳および乳製品

229

430

267

294

魚と関連食品

11,1

13,7

10,5

14,6

植物油

10,6

21,2

27,1

7,3

ジャガイモ

122

73

57

62

穀類

122

80

105

75

目次の主な項目をひろってみると、

  1. 個人の健康問題
  2. 家族問題
  3. 教育と労働
  4. 住宅問題
  5. 生活様式
  6. 社会資本
  7. 医療問題
  8. 麻薬やエイズ問題…

となっています。付属文書として巻末にはアンケートの見本が記載されています。モスクワ市民に宛てたものですが、どのようなアンケート項目があるのか、一見に値します。

政治や経済といった新聞やテレビ等で報道されるロシアではなく、庶民レベルのロシアを判断するにおいて、大変貴重なデーターと分析がなされている本書は、日本ロシア語情報図書館の蔵書の内でも貴重なものの一つです。本当は、ロシア語が分からない人にも目を通して欲しいのですが、まずは数多くのロシア語の分かる人が読んで、ロシアに関心のある人たちに紹介して欲しいものです。

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